分析 ・ 立て直し

東京で飲食店の30%が1年以内に閉店する本当の理由、そしてその避け方

日本の飲食業界の倒産件数は過去最高を記録しています。その数字の裏側には、弊社が監査するほぼすべての案件に共通する五つの原因があります。

開店前の東京の店内。リネンのカーテンと朝の光。

東京には16万の飲食店があり、世界でも有数のF&B密集都市です。それでも一つの数字が常につきまといます。開業から1年以内に、30%が閉店する。この数字の裏側で私たちが実際に見てきたものをお伝えします。

数字が示していること

東京商工リサーチによれば、2026年1月から5月にかけて411社の外食企業が倒産し、前年同期比で2.2%の増加。過去最多の水準です。帝国データバンクも2025年のデータで同じ傾向を確認しています。

倒産しているのは個人店だけではありません。チェーン、フランチャイズ、確立されたコンセプトの店も名を連ねています。言い換えれば、1年後の生存率はおよそ70%です。この選別は規模ではなく、経営の土台の強さで行われています。

原因1、開業前に家賃が利益を食い潰す

東京の商業賃料は構造的に高い水準にあります。しかし店を潰すのは月額家賃ではなく、初期費用です。敷金6か月から12か月、礼金2か月から6か月、仲介手数料、保証会社費用。

月額40万円の物件を契約した経営者が、開業前に500万円から700万円を支払うことになります。この資金は一円の売上も生みません。ただ寝ているだけです。

最もよく見るパターンはこうです。物件に資金を注ぎ込みすぎて、厨房、人員、運転資金に回す分が足りない。自己資金が目減りした状態で開店し、最初の一つ悪い月が、そのまま危機になります。

原因2、人手不足と人件費

日本の飲食業界は前例のない人手不足のただ中にあります。2026年、宿泊・飲食サービス業の未充足求人は129万件。特定技能ビザの飲食業分野での受け入れ停止が、状況をさらに悪化させました。

  • 人手不足に起因する倒産:NewsOnJapanの2026年6月の報道によれば、1年で2倍。
  • 人件費高騰に起因する倒産:同じ期間で6.6倍。
  • 調理人材の採用難:35%の事業者が最大の課題として挙げています。

その帰結は機械的です。人を確保できた店はより高い賃金を払い、確保できなかった店は営業時間を削るか休業日を増やす。売上が減れば賃金も上げられない。悪循環はひとりでに閉じていきます。

原因3、原価と物価上昇

日本の食品インフレ率は年率3%程度ですが、輸入食材によっては上昇幅がはるかに大きくなります。四半期ごとに価格を見直さない経営者は、気づかないうちに粗利を失っていきます。

典型的なのはこの状況です。メニューは18か月変えていない、原価は15%上がっている、それでも満席の店がなぜ赤字なのか本人にはわからない。

原価率が35%を超えたら、あなたは仕入先のために働いています。

着席型の飲食店であれば、原価率は売上の28%から32%に収まるべき数字です。決算期ではなく、毎月見るべき指標です。

原因4、仕組みがない

私たちが監査するほぼすべての店に共通しています。商品別の売上を記録するPOSがない、在庫管理がない、労働時間の記録がない、使えるデータが何ひとつない。

経営者は勘で回しています。その月が良かったか悪かったかはわかっても、理由はわかりません。一番売れている料理が一番儲かる料理とは限らず、それに誰も気づかないままです。

日本政策金融公庫は、経営スキルの不足を新規開業者の主要な失敗要因として挙げています。適切に設定したPOSは30万円から50万円、飲食に強い会計士は月5万円から10万円。これは贅沢ではなく、視界の確保です。

原因5、経営者がすべてを抱える

飲食店は三つの仕事の集合です。厨房、ホール、そして経営。私たちが出会う苦しい経営者は、そのうち一つに秀でています。多くの場合、厨房です。

1日10時間厨房に立ち、夜に帳簿をつけ、日曜にSNSを更新する。眠らず、任せず、一歩引いて全体を見ることがない。だから戦略も、優先順位の判断も、先回りも生まれません。

店は小さな綻びが出るまで持ちこたえます。一人の退職、家賃の値上げ、客足の落ち込み。問題は能力ではなく、たった一人にすべてが乗っている運営モデルのほうです。

土台があるとき、何が変わるか

この五つの原因は、どれも避けられないものではありません。そして、もう一皿いい料理を出すことでは解決しません。解決するのは手前の段階です。数字を握ること、仕組みを置くこと、三つの仕事を明確に分けること。

開業前のプロジェクトであれば、契約の前に市場調査、事業計画、物件探し、仕入先の開拓、採用までを構造化すること。すでに苦しんでいる店であれば、オペレーション、メニュー、価格、チームを徹底的に監査し、実行計画を時間をかけて守り切ることです。

飲食店が閉まるのは、料理がまずいからではありません。土台がなかったからです。

既存店の立て直しは、それ自体がひとつの専門です。私たちの仕事です。経営の立て直し

出典

アレクサンドル・ジェラールのポートレート。

アレクサンドル・ジェラール

戦略・ブランド・仕組み · 市場での立ち位置、ブランド構築、事業計画、顧客管理ツール、データ活用。

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