分析 ・ 海外ブランド

海外ブランドの日本進出:スターバックス、イケア、ピエール・エルメはなぜ定着したのか

スターバックスは日本で2,000店を超え、ピエール・エルメはパリより先に東京で1号店を開きました。イケアは2度目の挑戦で日本に根づいています。各社の上陸を年表で追い、何が効いたのかを整理しました。

夕暮れの東京の住宅街の角に建つ、木とガラスのファサードのカフェ。2階の窓際で人が作業し、店先には小さなテーブルと自転車、電柱が並ぶ。

1996年8月、スターバックスは北米以外で初めての店舗を銀座松屋通りに開きました。30年後の2026年3月末、国内の店舗数は2,116店です。

この記事の要点

日本で長く続いている海外ブランドには、効いた手が四つあります。日々の運営を日本の会社に任せる、出店の順番を選ぶ、ブランドは変えずに商品を合わせる、そして一度撤退したブランドは時間をかけて戻る準備をする、の四つです。この秋に上陸するブランドも、同じ手を使っています。

  • スターバックスは、日本法人を築き育てたのは日本のパートナーだとしています。2014年の時点で日本は同社第2の市場でした。
  • ブルーボトルはカフェより先に焙煎所を、ピエール・エルメはパリより先に東京の店を開きました。
  • イケアは2006年の再上陸までに東京の住まいを100軒以上訪ね、商品数を約1万点から7,500点に絞りました。

5社の一覧

ブランド日本上陸主な手現在
スターバックス1996年8月、銀座日本企業との合弁2,116店(2026年3月)
ピエール・エルメ1998年、ホテルニューオータニパリより先に東京27拠点
ブルーボトルコーヒー2015年2月、清澄白河カフェより先に焙煎所33拠点
シェイク シャック2015年11月、外苑いちょう並木運営を担うパートナー、都市ごとのメニュー19店
イケア2006年4月に再上陸、船橋4年かけた再上陸の準備14店舗

日本の会社による運営

海外ブランドは、日々の運営を日本の会社に任せ、ブランドと商品を自社で握ることができます。スターバックスとシェイク シャックがこの形をとりました。

スターバックスは1995年10月、日本の企業グループとの合弁で日本法人を設立しました。1号店はその10か月後です。2014年に同社がパートナーの持分を買い取った時点で、パートナーの出資比率は39.5%でした。日本は店舗売上で同社第2の市場になっており、店舗は1,000を超え、従業員は約25,000人でした。スターバックスは、日本事業を立ち上げて成長させたのはこのパートナーだと述べています。

シェイク シャックは2015年2月、日本の企業グループと独占契約を結びました。出店地の選定と店舗の運営はパートナーが担っています。1号店は2015年11月13日、北青山の外苑いちょう並木に開業しました。創業の地であるニューヨークのマディソン・スクエア・パークを思わせる場所として選ばれたそうです。2026年10月時点で国内19店です。

どちらの場合も、商品とブランドイメージはブランド側が決め、現場の運営はパートナーが引き受けています。

出店の順番

ブルーボトルとピエール・エルメは、まず次の出店を支える拠点を開き、ショーケースになる店はその後にしました。

ブルーボトルコーヒーは2015年2月6日、米国外で初のカフェを清澄白河に開きました。241㎡のうち181㎡が焙煎所で、カフェの席は8席でした。同社は焙煎から48時間以内の豆しか売りません。そのため、まず焙煎所をつくり、焙煎したての豆を届けられる範囲にだけカフェを出すと決めています。青山のカフェはその1か月後に開業しました。現在の国内拠点は33か所です。詳しい経緯は、当社の記事「ブルーボトルの日本展開」で紹介しています。

ピエール・エルメは1997年にメゾンを立ち上げ、翌1998年、最初の店をホテルニューオータニ東京に開きました。パリのボナパルト通りの店ができたのは2001年です。ホテル側は今も、この店を「世界第一号店」と紹介しています。国内の拠点は現在27か所で、ホテル、百貨店、青山のサロン併設店があります。フランスに次ぐ規模の店舗網です。

ブランドを変えずに商品を合わせる

5社とも看板商品はそのままです。そこに季節の味、都市ごとの限定、国内での製造といった、日本の客が求めるものを足しています。

スターバックスは2002年に抹茶 クリーム フラペチーノを発売し、同じ年にSAKURAシリーズを始めました。同社は「日本文化への敬意を込めて」と説明しています。同社はそれ以来、毎年春にこのシリーズを出しています。

シェイク シャックはバーガーを変えず、シェイクを地域ごとに変えています。日本限定の黒ごまシェイク、東京8店のほうじ茶シェイク、京都の宇治抹茶シェイク、広島のレモンチーズケーキシェイクがあります。東京の二つ星レストラン「傳」とのコラボレーションも重ねています。

ラッシュは国内で製造する道を選びました。神奈川県愛川町の工場でつくった商品を国内77店に届け、アジアの7市場にも出荷しているそうです。

再上陸の準備

イケアは撤退から20年後、4年の準備を経て日本に戻りました。再開業の初日には35,000人が来店しています。

イケアの最初の日本進出は1974年から1986年まででした。イケアのミュージアムは、日本の住まいには家具が大きすぎたこと、セルフサービスが受け入れられなかったことを理由に挙げています。2002年7月に日本法人を改めて設立すると、社員が東京の住まいを100軒以上訪ね、室内写真4万枚以上を分析しました。商品数は約1万点から7,500点に絞り、本棚や収納は低くしました。売場には4.5畳の部屋を再現し、配送と組み立てのサービスも加えています。

イケア Tokyo-Bayは2006年4月24日、船橋に4万㎡の店として開業しました。2020年11月には渋谷に7階建て、約4,800㎡の店を開いています。日本では初めての縦型店舗です。国内の店舗は現在14か所です。

2026年に上陸するブランド

この秋のブランドも同じ道をたどっています。開業前に日本法人をつくる、ショーケースになる場所を選ぶ、実店舗より先にネットで売る、といったやり方です。

  • ダンデライオン・チョコレート:2016年2月から蔵前に拠点を持つサンフランシスコのチョコレートメーカーです。10月30日、清澄白河に約990㎡、3層のファクトリーを開きます。ブルーボトルが最初の焙煎所を置いた街です。同社はクラフトチョコレートメーカーとして国内最大規模だとしています。
  • LEE GIMBAP(リキンパ):韓国に33店、米国に3店を持つキンパのチェーンです。10月22日、不動前駅の近くに日本1号店を開き、初日からデリバリーにも対応します。日本法人は開業の10か月前、2025年12月に設立されました。
  • ル・タヌア:1898年創業のフランスの革製品ブランドです。6月に日本語の公式オンラインストアを開き、10月21日から11月3日まで伊勢丹新宿店本館1階で日本初のポップアップを開いています。

海外ブランドが押さえておきたいこと

日本に来るブランドは、街を選ぶ前に三つを決めておく必要があります。誰が現場を運営するか、どの順番で出店するか、何を日本向けに変えるかです。

運営は、スターバックスやシェイク シャックのように日本のパートナー企業に任せるか、再上陸後のイケアのように日本人スタッフを抱えた自社法人で回すか、のどちらかです。どちらでも、貸主、採用会社、仕入れ先、区の保健所とやりとりできる人が現場に必要です。

出店の順番については、ブルーボトルが、最初の拠点は売場より先に生産の場になりうることを示しています。ピエール・エルメの例は、日本が本国より先になってもよいことを示しています。

日本向けに変わることが多いのは、季節のメニュー、商品のサイズ、接客です。スターバックス、シェイク シャック、ピエール・エルメは看板商品をそのまま残しました。イケアは家具のサイズを変え、デザインとセルフサービスは残しています。

Dodai Studioは、日本に出店するブランドのためにこの役割を担っています。物件を探し、賃貸借契約を交渉し、営業許可を取り、スタッフを採用し、仕入れ先を選びます。商品と、資金を伴う判断はブランドの手に残します。

出典

よくあるご質問

日本に出店するには日本のパートナーが必要ですか。

必須ではありません。イケアが2002年にしたように、自社で日本法人をつくることもできます。日本のパートナーが担うのは主に日々の運営で、出店地、スタッフ、貸主との関係です。スターバックスとシェイク シャックはこの形を選びました。スターバックスは合弁設立から19年後の2014年に、パートナーの持分を買い取っています。

海外ブランドが日本で開業するまで、どのくらいかかりますか。

スターバックスは日本法人の設立から10か月で1号店を開きました。シェイク シャックは契約から9か月です。イケアは2002年の法人設立から2006年の船橋開業まで、4年近くかけています。

商品は日本向けに変える必要がありますか。

ここで取り上げたブランドは、看板商品を残したまま派生商品を加えています。スターバックスの季節の味、シェイク シャックの地域限定シェイク、イケアのサイズを変えた家具です。変わるのはメニュー、サイズ、接客で、ブランドの顔になった商品はそのまま分かる形で残っています。

なぜ最初に東京なのですか。

百貨店、ホテル、メディアや客が注目する街が東京に集まっているからです。ピエール・エルメはパリより先に東京に出店し、スターバックス、ブルーボトル、シェイク シャックも日本1号店を東京に開いています。

ポップアップだけで日本市場に入れますか。

ポップアップなら、賃貸借契約を結ばずに販売し、客の反応を見ることができます。ル・タヌアは日本語のオンラインストアを開いた後、伊勢丹新宿店でポップアップを開いています。形式、会場、費用は、当社の「東京のポップアップストアガイド」で詳しく紹介しています。

ジェラールアレクサンドルのポートレート。

ジェラールアレクサンドル

戦略・ブランド・仕組み · 市場での立ち位置、ブランド構築、事業計画、顧客管理ツール、データ活用。

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