分析 ・ 新業態
新業態とは何か:日本の飲食チェーンは新コンセプトをどう試すか
パンチョ、モスバーガー、ファミリーマート。この1年に東京で新業態を開いた6社の試し方と、海外ブランドが学べることをまとめます。

2026年10月2日、ナポリタン専門店を全国51店舗展開するパンチョが、代々木に「ごちそうスープパスタ」1号店を開業しました。スープパスタは11種類、席数は25席、価格は1,419円から1,749円です。10月5日には、ちゃんぽん店を20店舗運営するGOSSOが、品川で1杯858円の中華そば店を開きます。
この記事の要点
日本ではこうした動きを「新業態」と呼びます。新しいアイデアを試したいチェーンは、別の店名で1店舗だけを、多くの場合は東京に出店し、コンセプトが顧客に受け入れられるかを確かめてから展開を判断します。
- 1年で6つの新業態:2025年12月から2026年10月までに、少なくとも6つのチェーンが東京で新業態を開業しました。銀座のプロントから麻布台のファミリーマートまでです。
- 本業の技術を土台に:ほぼすべての新業態が、スープ、炭火、カウンターといった既存の技術から出発しています。商品は変わっても、技術は引き継がれます。
- 1店舗、小さな店:飲食店で22席から66席。判断には1店舗で足ります。
新業態とは
新業態とは、すでに1つ以上のブランドを運営する企業が立ち上げる、新しい形態の店舗です。プレスリリース配信サービスのPR TIMESに専用のキーワードページがあるほど、よく使われる言葉です。
新業態では、商品、営業時間、ターゲット顧客、立地のいずれかを変えます。一方で、仕入れ先、調理技術、厨房スタッフ、ブランドなど、本業の何かをほぼ必ず引き継いでいます。この点が、ゼロから作る新規事業との違いです。
この1年に東京で開業した6つの新業態
| 新業態 | 開業 |
|---|---|
| PRONTO THE FIRST(プロント)銀座。1階はスペシャルティコーヒー、2階は17時以降エスプレッソバー、66席 | 2025年12月 |
| MOSH Burger & Bar(モスバーガー)銀座。昼はバーガー、夜はバー。チーズバーガーセット1,380円 | 2026年7月 |
| FAMIMA Park(ファミリーマート)麻布台。NIGOと手がけ、わざわざ足を運んでもらうことを狙ったコンビニ。売場217㎡、アパレル、試着室 | 2026年7月 |
| 炭火ビストロ Le Logis Beau(フォースター)西池袋。築60年の古民家で炭火ビストロ。44席、客単価6,000〜7,000円 | 2026年10月 |
| ごちそうスープパスタ(パンチョ)代々木。スープパスタ11種、25席(うちカウンター9席) | 2026年10月 |
| 中華そば じげもん軒(GOSSO)品川。1杯858円の日常使いの中華そば、22席、オフィス街 | 2026年10月 |
6社の選択は共通しています。各社1店舗だけを、それぞれ異なるエリアに出しています。夜に強い2業態は銀座、オフィスワーカーの昼食は品川シーズンテラス、海外からの集客を狙うコンビニは麻布台です。試し方は3つに分けられます。
同じ場所にもう1つの時間帯を加える
1つ目は、すでに成立している業態の営業時間を延ばす方法です。プロントは1988年に並木通りで開いた1号店を全面改装しました。1階は終日ハンドドリップコーヒーを出し、2階は17時以降エスプレッソバーになります。エスプレッソマティーニは1,650円からです。
モスバーガーも銀座で同じ考え方をとっています。MOSH Burger & Barは昼に8種類のバーガーを、夜はカクテルとおつまみを出し、金曜は23時まで営業します。家賃の高いエリアでは、昼、仕事帰り、食後の3つの時間帯に売上を立てられる店のほうが、同じ面積をより長く使えます。
モスバーガーにとって、これは最初の挑戦ではありません。2022年11月に南麻布でチーズバーガー3種の専門店「mosh Grab'n Go」を開き、約2年後の2024年10月に閉店しています。銀座の新業態は、そのアイデアに夜の営業を加えたものです。
技術はそのまま、商品を変える
2つ目は、厨房がすでに得意とすることから出発する方法です。パンチョはソースとパスタの扱いを熟知しています。「ごちそうスープパスタ」ではパスタをスープで出し、残ったスープでチーズリゾットを作る〆も用意しました。鍋やラーメンの〆と同じ発想で、顧客がすでに持っている習慣を生かしています。
GOSSOはちゃんぽんで同じことをしています。プレスリリースによると、品川の新店は強火で野菜を炒める技術とスープづくりを生かし、毎日食べたくなるシンプルな一杯を提供します。中華そばとタンメンは858円、平日は10時半から21時まで営業します。
オイスターバーを中心に運営するフォースターは、炭火ビストロ「Le Logis Beau」を開きました。牡蠣はエスカルゴバター焼き(1,650円)としてメニューに残し、黒毛和牛の炭火グリル(3,850円)と約50種のワインを並べています。
店舗そのものを目的地にする
3つ目は、来店の理由を変える方法です。2026年7月10日に麻布台で開業したFAMIMA Parkは、店そのものを目当てに人が訪れるファミリーマートです。クリエイティブディレクターのNIGOと手がけ、アパレルの「コンビニエンスウェア」を専任スタッフと試着室つきで販売し、店に入らずに買えるテイクアウトスタンドや屋上の緑化スペースも備えています。
ファミリーマートはプレスリリースで、ここで成功した取り組みを全国に広げる方針を示しています。全国チェーンにとっての実験店舗です。
なぜ小さく、なぜ東京なのか
試験的な業態は、商品と顧客について具体的な問いに答えるためのものなので、規模を小さく抑えます。表の飲食店は22席(品川)から66席(銀座)です。小さな店は内装費を抑えられ、リピートの有無もすぐに見えます。
東京にこうした実験が集まるのは、数キロ圏内にまったく違う客層がそろっているからです。品川のオフィス、銀座の夜、西側の住宅地。チェーンは試したい顧客に合うエリアを選べます。
海外ブランドが学べること
日本のチェーンが自社に適用している方法は、私たちが日本に進出するブランドに勧めている方法と同じです。
- 1号店はパイロット:複数店舗や大型の旗艦店に投資する前に、価格、メニュー、営業時間、客層を確かめる場です。
- 顧客がすでに知っている習慣に乗せる:パンチョはパスタに〆を持ち込み、プロントとモスバーガーは、昼はカフェで夜はバーという、東京の人になじみのある使い分けを取り入れました。海外ブランドも、自社の商品を自然に受け入れてもらえる日本の習慣を探す価値があります。
- 空いている時間帯を工夫する:昼と夜の両方で営業する店や、2つの業態が同じ物件を分け合う店は、東京の家賃を負担しやすくなります。私たちがブランドと事業計画を試算するとき、最初に確認する点の1つです。
出典
- 株式会社パンチョ「ごちそうスープパスタ」代々木1号店オープンのお知らせ、PR TIMES、2026年9月
- GOSSO株式会社「中華そば じげもん軒」品川シーズンテラス開業のお知らせ、PR TIMES、2026年9月
- 株式会社フォースター「炭火ビストロ Le Logis Beau」グランドオープンのお知らせ、PR TIMES、2026年9月
- 株式会社ファミリーマート「FAMIMA Park Azabudai」ニュースリリース、2026年7月
- プロント「PRONTO THE FIRST」銀座並木通り開業のお知らせ、PR TIMES、2025年11月
- SoraNews24、銀座「MOSH Burger & Bar」開業記事、2026年7月
- PR TIMES「新業態」キーワードページ、2026年10月閲覧
よくあるご質問
新業態とは何ですか?
新業態とは、ほかのブランドをすでに運営している企業が立ち上げる新しい形態の店舗です。商品、営業時間、客層のいずれかを変え、本業の技術の一部を引き継ぎます。
日本のチェーンはなぜ新業態をつくるのですか?
アイデアを1店舗で試してから展開するためです。新商品、新しい客層、家賃の高い物件の有効活用などが目的になります。たとえばファミリーマートは、FAMIMA Parkで成功した取り組みを全国に広げるとしています。
試験的な業態の規模はどのくらいですか?
2025年末から2026年10月までに東京で開業した新業態の飲食店は、22席から66席です。小規模にすることで投資を抑え、客層の反応を早く読めます。
チェーンはどこで新コンセプトを試しますか?
多くは東京で、狙う顧客に合うエリアを選びます。夜なら銀座、オフィスワーカーなら品川、海外からの来訪者なら麻布台です。
海外ブランドは出店前に日本でコンセプトを試せますか?
はい。小規模な1号店、日本法人が運営するポップアップ、シェアキッチンの時間貸しなどで、長期の賃貸契約を結ぶ前に価格と客層を確かめられます。



